ディーリアス音楽入門


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心に深い傷を持つ人にふさわしい音楽

ディーリアスって作曲家、聞いたことがありますか?こう言うと大体皆さん「知らない」とか、「カンケーないじゃん」とか言います。クラシック音楽を聴く人でも、「あの小品ばかり作曲していた変人?」てなことをのたまいます。このサイトはそのディーリアスの音楽について、多くを語っている一風変わったサイトなのです。

広いネットの海を渡ってここにたどり着いたあなた。まずはお疲れ様でした。荒唐無稽な話に少しだけお付き合い下さい。
ところで、あなたは何故ネットを彷徨っているのでしょうか?何かを求めているから?それは時に物質的な物でもあるし、精神的な物でもあるでしょう。それは得られましたか?
何か信仰宗教やマルチの勧誘のようですが、皆さんが日々の人間関係や社会活動、経済活動で疲れ、あるいは深い傷を負っているとします。(それは今の私も例外ではありませんが・・)短い余暇の時間を生かして、J-POPやポップスやジャズや民俗音楽、演歌を聞く。それは今や我々に無くてはならないストレス解消なのでしょう。

おすすめしたいのは、クラシック音楽を聴くこと。でもあまりにもジャンルが多すぎてよく分からない。何から聴き始めていいのか分からない・・。クラシックのサイト自体、用語も特殊性に溢れ近寄りがたい。そんな現状があります。何より、クラシック音楽を聴く人はお高くとまっていて、何か見下しているのでは?でもそれは誤解です。それは、心に深い傷を持つ人だからこそ、音楽にのめり込む、そして現状を克服している現実があるのです。

ディーリアスの作品を聴いてみよう!

もし、あなたがアマゾン・ドットコムやタワー・レコードの注文で、ディーリアスのヴァイオリン協奏曲を入手できたなら、まずは何も考えず聴いてみて下さい。最初はつまらない・・2回目に聴いた時、少しだけ注意して聴いてみて下さい。ここで、展開部オーケストラ全弱奏の中、紡ぎ出されるヴァイオリンの旋律があなたに届きましたか?この旋律は、あなたが今まで出会った旋律とはあきらかに違う、しかしあなたが一番良く知っている心の旋律です。「寂しい?」そうかも知れません。「悲しい?」そうかもしれません。この旋律はあなたの心の傷を癒す・・とは言いませんが、傷に手をあてがってくれる旋律です。目を閉じてください、次にこの旋律はオーボエに継がれて再現し、弦が優しく奏で出す。あなたは幼い時の自分とか、思い出せないような昔のことを辿っている筈です。そして、涙がとめどなく流れていることを知るでしょう。ディーリアスはこんな旋律を作った作曲家なのです。彼の作品には、勇壮なテーマとか崇高な主題とか、日本人の大好きな「苦しみから歓喜へ」のようなものは一切ありません。ただ少し古く懐かしい旋律で、目を閉じれば確実に人を過去に誘ってくれる不思議な作品を残したのです。
過去に帰ること・・・これは後退なのかも知れませんが、時に必要なことです。
あなたが例えようも無い不幸や、失恋や、人生の苦しみに直面した時、死ぬこともままならず、やはり乗り越えていかねばなりません。でもがむしゃらに壁に挑戦しても落ちるだけでしょう、その時はただ眼を閉じて、あなたの歩いてきた道を振り返る・・・。それがいちばんいいのかも知れません。

あなたがディーリアスの作品を聴きだした時に

ディーリアスの作品を聴かずにいられない・・こうなると、あなたも立派なディーリアンの一員です。毎日、彼の作品にその不思議な旋律を見つけることでしょう。しかし、ある日、「こんな旋律のなかに浸っていてはいけない」と警鐘を鳴らすもう一人の自分に気がつくでしょう。なぜなら、いつもこの旋律は麻薬のようにあなたを過去へと引き戻すからです。
ここで、あなたはもう一つあることを発見するでしょう。ディーリアスの作品には必ず有る彼の凍った微笑を・・・。すなわち、彼の思想の底流にあるのは、ある種の「諦観」なのではないかと。何故、彼は田舎で隠遁生活を送ったのか?何故、一握りの人にしか心を開かなかったのか?また、何故、彼はあんなに自然の描写がうまかったのか?あなたの疑問はとどまる所を知りません。
ここで、ちょっと考えてみて下さい。「あきらめ」を持ちつつ、このような旋律を作曲したディーリアスのことを。なぜ、彼はこんな作品を残したのでしょうか?はたして、残す必要があったのでしょうか?ただ闇雲に花を愛で四季を楽しみ、親の財産で豊かな人生を謳歌すればよかったのではないか?
・・・・・。
もしかしたら、彼は、深く傷ついていたのではなかったのか?そう、私たち以上に・・・・。
・・・・・。
私は、ここに彼の非常に誠実で、ヒューマンな心を見るのです。それは私たちに、多くの希望を与えてくれます。

いまだ鳴り止まない音楽

さて、このサイトにはそんなディーリアスの作品や、今ではあまり知られることもなくなった作曲家のこと、忘れ去られていく久坂葉子や長沢延子という夭折作家のことも書かれています。それらは、このサイトであなたが発見してください。

2000年12月     by 市川 千尋(いっちゃん)